2008年12月12日

『僕を支えた 母の言葉』

『僕を支えた 母の言葉』

僕が3歳のとき、父が亡くなり、その後は母が女手ひとつで僕を育ててくれた
仕事から帰ってきた母は疲れた顔も見せずに晩ごはんを
つくり晩ごはんを食べた後は内職をした
毎晩、遅くまでやっていた
母が頑張ってくれていることはよくわかっていた

だけど僕には不満もいっぱいあった
学校から帰ってきても家には誰もいない
夜は夜で母は遅くまで内職
そんなに働いているのにわが家は裕福じゃなかった

遊園地にも連れて行ってもらえない
ゲームセンターで遊ぶだけの小遣いももらえない
テレビが壊れた時も半年間買ってもらえなかった
僕はいつしか母にきつく当たるようになった
「おい」とか「うるせー」とかなまいきな言葉を吐いた
「ばばあ」と呼んだこともあった
それでも母はこんな僕のために頑張って働いてくれた

そして僕にはいつもやさしかった
小学校6年のときはじめて運動会に来てくれた
運動神経の鈍い僕はかけっこでビリだった
悔しかった
家に帰って母はこう言った「かけっこの順番なんて
気にしないお前は素晴らしいんだから」だけど僕の悔しさはちっともおさまらなかった
僕は学校の勉強も苦手だった
成績も最悪、自分でも劣等感を感じていた
だけど母はテストの点や通知表を見るたびに、
やっぱりこう言った「大丈夫、お前は素晴らしいんだから」
僕には何の説得力も感じられなかった
母に食ってかかったこともあった
「何が素晴らしいんだよ!?どうせ俺はダメな人間だよ」
それでも母は自信満々の笑顔で言った
「いつかわかる時が来るよ、お前は素晴らしいんだから」

僕は中学2年生になったころから仲間たちとタバコを吸うようになった
万引きもした
他の学校の生徒とケンカもした
母は何度も学校や警察に呼び出された
いつも頭を下げて「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と、
あやまっていた
ある日のこと僕は校内でちょっとした事件を起こした
母は仕事を抜けだしいつものようにあやまった
教頭先生が言った
「お子さんがこんなに“悪い子”になったのはご家庭にも
原因があるのではないでしょうか」
その瞬間、母の表情が変わった
母は明らかに怒った眼で教頭先生をにらみつけ、
きっぱりと言った「この子は悪い子ではありません」
その迫力に驚いた教頭先生は言葉を失った
母は続けた「この子のやったことは間違ってます。
親の私にも責任があります。ですがこの子は悪い子ではありません」
僕は思いっきりビンタをくらったようなそんな衝撃を受けた
僕はわいてくる涙を抑えるのに必死だった
母はこんな僕のことを本当に素晴らしい人間だと思ってくれてるんだ…
あとで隠れてひとりで泣いた

翌日から僕はタバコをやめた
万引きもやめた
仲間たちからも抜けた
その後中学校を卒業した僕は高校に入ったが肌が合わなくて中退した
そして仕事に就いた

その時も母はこう言ってくれた「大丈夫、お前は素晴らしいんだから」
僕は心に誓った「ここからは僕が頑張ってお母さんに楽をしてもらうぞ」
だけどなかなか仕事を覚えられなくてよく怒鳴られた。
「何度おなじこと言わせるんだ!」「すこしは頭を働かせろ!」
「お前は本当にダメなやつだな!」
怒鳴られるたびに落ち込んだけどそんなとき
僕の心には母の声が聞こえてきた
「大丈夫、お前は素晴らしいんだから」
この言葉を何度も噛み締めた
そうすると元気がわいてきた
勇気もわいてきた
「いつかきっと僕自信の素晴らしいさを証明してお母さんに見せたい」
そう考えると僕はどこまでも頑張れた

仕事を始めて半年くらい経ったときのことだった
仕事を始めて
半年くらいた経ったときのことだった
仕事を終えて帰ろうとしたら社長がとんできて言った
「お母さんが事故にあわれたそうだ
すぐに病院に行きなさい」

病院に着いたとき
母の顔には白い布がかかっていた
僕はわけがわからなくて
何度も「おかあさん!」と叫びながら
ただただ泣き続けた

僕のために身を粉にして働いてくれた母
縫いものの内職をしているときの母の丸くなった背中を思いだした
母は何を楽しみにして頑張ってくれたんだろう?
これから親孝行出来ると思ったのに
これから楽させてあげれると思ったのに

葬式のあとで親戚から聞いた
母が
実の母でなかったことを
実母は僕を産んだときに亡くなっらしい
母はそのことをいつか僕に言うつもりだったんだろう
もしそうだったら僕はこう伝えたかった
「血はつながってなくてもお母さんは僕のお母さんだよ」
あれから月日が流れ、僕は35歳になった


生きていることは、当たり前ではない。

ありがとうございます。


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Posted by (有)東洋住研 at 15:33│Comments(0)心があたたまるコミュ
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